罅画美|ひびがび 矢成 光生 展
2026 年 5 月 30 日(土)~ 7 月 5 日(日)
協力: つばきグループ
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罅画美|ひびがび
美しい罅の絵。学生時代に、偶然出逢ったクラッキング テクスチャーは、カシュー漆と油絵の具と重力を用いて生まれる。当初は、マテリアルとして罅を発生させて、抽象的な作品を制作していた。若い頃、アラスカや北海道での川旅や千葉での田舎暮らしがきっかけとなり、自然と人工物のコントラストを意識するようになった。そして、その後起きた東日本大震災。アトリエで、ぼんやりと黄色い油絵の具をはく落させた画面を見ていると突然、罅がプルーム(放射性物質)に見えてきた。以降、先ず罅で下地を作り、その上から原子力発電所や原爆ドームなどを描くようになった。罅は作家の視座次第で放射能にもきのこ雲にも黒い雨にもなる。さらに、海や瀧や雲や山やオーロラや宇宙空間にだってなる。コントロールできない美しい罅の中に飛び込み、自由にもがき、対話しながら人間が生きてきた時代を描いていく…そんな感じでしょうか。
矢成 光生
「矢成光生- 彼はカシューのヒビの中からAnother World を見出す」
矢成光生はそのカシューを描画材料として発見した。
かつて岡本太郎さんは「作家は自分の世界観を表現するために独自の手法や技法を編み出すのだ」と言っている。
私の絵画についての考えに「絵画を近くで観ると物質の状態、遠ざかって観ると精神の構造・システムが見えてくる」がある。
矢成の代表作に洛中洛外図屏風を下敷きにした作品「Wonder Future」(2017 年) がある。この作品で岡本太郎現代芸術賞に入選。「 洛中洛外図」という構図は様式といってもいい。日本絵画は伝統継承という形で様式を真似ることがある。実は矢成の幼少期から実家の居間に「洛中洛外図」の壁紙が貼ってあったという。
「洛中洛外図」の中の細部に描かれた都の人々の活気を観るのが楽しかったと矢成は話す。この原体験としての「洛中洛外図」が彼の代表作である「Wonder Future」に反映されていることは間違いないだろう。そして彼は「炭鉱のカナリア」( 炭鉱でガス漏れにいち早くカナリアは感じるためアーティストの隠喩として) のように現在、過去、未来の日本を描いたのだ。2025 年「戦争と平和の印象画」の作品は現在のイランやウクライナの戦争を想起させる作品だ。
2011 年東日本大震災と東京電力福島第一原発事故という現実が矢成の制作のテーマと繋がった。特に放射線のイメージと意図的に剥落させる彼の独自の手法に繋がる。その痛みを伴う物質感が矢成自身の想像力に転化したのかも知れない。ガストン・バシュラールが言う「物質と想像力」に繋がってくる。 バシュラールは「物質と向き合いその中で夢見ること( 夢想) が新たな詩的生成の最良の状態である」と説いた。矢成は現状との関わりとして復興支援活動もしていた。しかしそれよりも作家として「カシューと油彩」という物質の現実的なぶつかり合いが彼の詩的生成としての作品を作っているのに違いない。
※カシューはウルシ科の植物
京都場館長 仲野泰生( 元川崎市岡本太郎美術館学芸員)
◾️矢成光生 略歴
1969 愛知県生まれ
1997 多摩美術大学大学院博士前期課程美術研究科絵画専攻修了
[受賞]
第21回 岡本太郎現代芸術賞 入選
第28回 岡本太郎現代芸術賞 入選
[最近の個展]
2017「Something in The Air」(藍画廊/東京)
2020 「Under The Cloud」(Gallery Q/東京)
2023「Cracked View」(O Gallery/東京)
[主なグループ展]
2017 「TAMA VIVANT Ⅱ 2017 ポガティブ」(アートテーク·ギャラリー/東京)
2018 「第21回 岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館/神奈川)
2019 「もやい展 金沢」(金沢21世紀美術館/石川)
2021 「もやい展 東京」(タワーホール船堀/東京)
2022 「木更津みなとぐちアートプロジェクト」(千葉)
2024 映画「まる」に携わったアーティスト展(小松庵総本家銀座/東京)
2025 「第28回 岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館/神奈川)
2026 「ひとみたいなもの ものみたいなひと」(ギャラリー睦/千葉)


